2020.02.12
近年、医療機関で働く救急救命士は医師の働き方改革や法改正により、さらに需要が高まっています。
しかし、病院で働く救急救命士は医療機関の規模によって役割が大きく違います。
当院の救急救命士科では、搬送業務だけでなく、救急車で来院された患者さんの診療をより安全に、より円滑におこなうことができるように、救急室におけるヒト、モノのコーディネート業務や診療補助など幅広い業務に取り組んでいます。
この記事では、2006年から救急救命士の採用をはじめた当院の救急救命士の歴史や業務内容、職員や消防署との関わり方。
また、教育や今後の救急救命士のあり方について書いています。
チーム医療の一員としての救急救命士
当院の救急救命士の歴史は全国と比べても古く、2006年にさかのぼります。
当時は病院で働く救急救命士の認知度はなく、「医療知識のある看護助手がほしい」という観点から採用が始まりました。
そして救急外来での役割が増えるなか、救急救命士科を立ち上げました。
現在は、教育や連携強化のため看護部に所属しています。
医療機関内での可能性を見出し、救急救命士科を立ち上げた
採用当初は救急外来だけでなく、看護助手として一般外来や病棟に分かれて勤務をしていました。
しかし、救急の分野での能力が認められ、救急外来での役割が徐々に多くなりました。
救急外来での役割が増えるなか、救急救命士科の立ち上げのために、自分たちのやるべきこと、できることを考え医療機関内の救急救命士だからこそできる業務の確立を目指して、5年間実績を積みあげました。
その結果、2015年に院内で独立した部署「救急救命士科」を立ち上げることができました。
今では、救急外来で必要不可欠な存在となっています。
今でこそ多くの病院で救急救命士が働いていますが、歴史が古いからこそ、院内での認知度の高さは他にはないものかもしれません。
救急救命士科として委員会に参加
当院の救急救命士科は、立ち上げ当初から「医療安全対策委員会」や「感染対策委員会」など医療機関で必要なすべての委員会に参加しています。
また、規定の講習会を受講し、医療安全管理者を取得している救急救命士が在籍しています。
教育面と院内の連携強化のために看護部に所属
2015年に救急救命士科ができたときは副診療部に所属していました。
しかし、医療機関内で通用する知識や技術の教育が必要なため、また救急外来における連携強化のために、2019年に看護部に入りました。
1つの科として独立していますので、看護師長や他の所属長と同じように師長会などの各会議に救急救命士科として出席しています。
より安全に、より円滑に医療を提供できるように
当院の救急救命士は、救急搬送などの搬送業務だけでなく救急車で来院された患者さんの診療を円滑におこなうために、医師、看護師やコメディカル、事務員などの人員や、CTや検査機器などの医療機器の稼働状況を把握し、患者さんの待ち時間や負担が少なくなるように受け入れに対応しています。
院外業務 転院やプレホスピタルなどの搬送業務
医療機関で働く救急救命士は、転院・プレホスピタル搬送にかかわることが多いと思います。
医療機関からの搬送業務ではさまざまな診断がなされ、多くの処置や治療が開始された患者様を搬送します。
当院の救急救命士も搬送業務に多く携わっています。
院内業務 受入要請と総合的な救急コーディネート
当院の救急救命士は医療や病院の知識をもち、救急車の受入れ要請の対応から受け入れの判断、救急車が到着したときの救急外来での業務を総合的にコーディネートをしています。
ホットラインで救急隊の受入要請に対応
救急専用の電話をもち、救急車の受入要請の対応だけでなく、受け入れの判断もしています。
受入要請では、救急隊からの患者情報のなかで疑われる疾患があれば、追加情報の聴取をおこない、より安全に、より円滑に受け入れができるように対応しています。
もっとも重要としているのは、当院の現状を医療の知識をもとに正確に把握し対応可能か見極めていることです。
救急外来の業務を総合的にコーディネート
救急車が到着したときには、一番にかけつけ病院内の重症度や職員の役割と人数、また医療機器の稼働状況から処置や検査の順番を判断し、医師、看護師、コメディカル、事務員と協働し患者さんに対応しています。
重症度を判断するためには、患者さんの状態を主訴だけでなく、客観的なデータ(検査データやバイタルサインなど)と総合的に判断・評価する力が求められます。
また、病院のヒトとモノの稼働状況は、電子カルテや他職種とのコミュニケーション、毎日おこなっている救急対応のミーティングから情報を得ています。
そして、患者の対応によって変わる稼働状況は、救急室における業務に関わることでその都度把握し、救急外来の業務を総合的にコーディネートしています。
医療機関内で働く救急救命士として搬送業務だけでなく、院内の診察状況などの総合的な状況を正確に把握するために教育にも力を入れています
院内外業務をおこなうにあたり、医療機関で働く救急救命士は学校では学ばない領域の知識と技術が非常に多く求められます。
当院では、医療機関に属する救急救命士に必要な知識と技術を習得するために、救急救命士の教育課程の一部を看護師のクリニカルラダーとタイアップし、病院内で必要な標準的教育を看護師と一緒に学ぶ体制をとっています。
また、クリニカルラダー教育の講師も一部担当しています。
時代の流れより先を見すえて
医療機関内で働く救急救命士として、医師、看護師、事務員など全職員と協力して患者さんに対応しています。
そのためには、医療機関内でしか習得できない知識や技術、また臨床に近い場で判断能力などを基礎として連携が大事となってきます。
看護師との連携 医療機関内でも通用する知識と技術獲得のための教育
救急救命士科の教育課程の一部を看護師のクリニカルラダーとタイアップして、看護師と一緒に学んでいます。
また、救急室(救急外来・初療室)で観察や評価をおこなうことに関わっています。
医師との連携
搬送業務中に必要となる特定行為の院内研修プログラムの構築と院内メディカルコントロール体制の構築のために、医師と連携をとり、病院で働く救急救命士としてさらなる技術の向上やそれを支える体制を構築していきます。
消防署との連携
救急救命士という同じ国家資格をもつ、消防署員と連携して「救急シェアシート」を作成し、消防救急隊と救急患者のシェアを通じて連携を深め、勉強会や症例検討会に繋げていきます。
地域との連携 プレホスピタルケア搬送の開始
地域と連携し、プレホスピタルケア搬送を開始していきます。
チーム医療の一員として最大限活躍するために
神戸徳洲会病院の救急救命士科は、2006年からありとても古い歴史をもちます。
また、救急救命士科は独立した部署であり、所属も副診療部を経由し医療の知識を得て、連携を強化するために看護部に入っています。
そのため、医師や看護部、副診療部や事務部のすべての部署と連携を取り、業務にあたることができ、活躍できる役割がとても多岐に渡っています。
そして、さらに院内外の連携を強化することにより、より安全により円滑に医療を提供できるように取り組んでいきます。
働き方改革や法改正など取り巻く環境の変化によって、救急救命士の活躍の場や役割が大きくかわります。
そういった場合でも、即戦力として対応できるように、教育、連携にさらに力を入れていきます。
この記事を書いた人
救急救命士科の部門紹介
救急救命士科は、看護部に所属し、医師、看護師、事務員と協力して一般外来やERの患者様対応を行っています。
この記事を書いた人
救急救命士 神戸徳洲会病院 救急救命士科 責任者 秋田健太郎
編集者 岡大徳
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