起立性調節障害って?


夜遅くまで起きていて、朝は体がつらく起きられない。でも午後になると元気で、夜は携帯を見たりゲームで遊んだり・・。側から見ると怠けているようにしか見えない。これは起立性調節障害によく見られる光景です。
中高生の10人に1人がこの病気を発症し、その内3割は不登校になっています。特に小児科の日常の臨床の場で頻繁に遭遇する病態であり、コロナ流行前と比較して起立性調整障害患者が多くなってきており社会問題化していると言っても過言ではありません。

患者本人は体がつらいのに原因がわからず、不安な思いをしています。またこの病気が厄介なのは、最も発症しやすい時期が思春期で、高校進学という人生の帰路にあたるということです。中学生で不登校になり、「このまま引きこもり、ニートになるのでは・・・・」と悩む保護者も多いです。

起立性調節障害の判断基準


① 以下の症状の3つ以上当てはまる


・立ちくらみ、めまいを起こしやすい
・立っていると気持ちが悪くなる
・入浴時、あるいは嫌なことを
・見聞きすると気持ちが悪くなる
・少し動くと動悸、息切れがする
・朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い
・顔色が青白い
・食欲不振
・腹痛がある
・倦怠感がある、あるいは疲れやすい
・頭痛がある
・乗り物に酔いやすい

② 新起立試験を実施し、以下のいずれかに当てはまる


・起立直後性低血圧(軽症型、重症型)
・体位性頻脈症候群
・血管迷走神経性失神
・遷延性起立性低血圧

①の症状が3つ以上あてはまり、②のサブタイプのいずれかにあてはまる場合は、起立性調節障害と診断

原因は?


起立性調整障害の病型の典型は体位性頻脈症候群(postural tachycardia syndrome: POTS)であり、
立位時や起床時に下肢や腸管の血管の収縮不足のために、頭部や上半身への血液量が不足しそれを代償すべく心拍数が上昇する病態となっています。
症状は多種多様で午前中を中心とした倦怠感や動悸、腹痛、頭痛などが日常的に存在し、長期間続くことが特徴です。

治療方法


一般的な治療法については飲水療法やミドドリン内服などがガイドラインで推奨されています。しかし実際の臨床の場では、症状増悪時にはなす術もなく帰宅される場合が多く、診療を行なっている主治医や、患児とその家族に多大な我慢を強いているのが現状です。

近年POTSに対する治療法1)2)が米国で提示されたことを受け、当院で積極的にその治療を行なった結果、簡単に劇的に効果を認めたため今回ご紹介したいと思います。
論文によると生理食塩水の静注を行うことにより効果は即座に発現し数日間持続すると報告されています。具体的には症状増悪時に生理食塩水500ml~1.5Lを30分〜2時間以上かけて静注を行います。

実際、当院のPOTS患者に対して生理食塩水静注療法を行ったところ、翌日には症状は改善し報告の通り点滴後3-4日は活気的に過ごすことができるようになり、登校が可能になった症例を数例経験しました。
本舗ではPOTS児童に対する生理食塩水静注療法はほとんど行われておらず、多くのPOTS児が不十分な対応しか受けられない状況であり今回報告しました。注意事項や方法などの質問などがございましたらご気軽に当院までご連絡ください。

1) Stewart JM, Boris JR, Chelimsky G, et al.: Pediatric disorders of orthostatic intolerance. Pediatrics 141, e20171673, 2018.
2) Sheldon RS, Grubb BP, Olshansky B, et al.: 2015 Heart Rhythm society expert consensus statement on the diagnosis and treatment of postural tachycardia syndrome, inappropriate sinus tachycardia,

この記事を書いた人


神戸徳洲会病院 小児科部長 泉井 雅史