はて、救急病院が忙しいのは日常ですね。忙しさを少しでもましにするために予定表に予定を詰め込んで、さらに予定と予定の間にさらにその日に湧き上がってきた新しい仕事をねじ込んでしまう、みたいなことはうちの職員がよくやっていることではないかと思います。もういっぱいいっぱいで仕事を増やせない、けれども次から次に仕事がやってきて、さらに仕事を増やすためにはどうしたらよいのでしょうか。
アメリカのある病院の話です。32室の手術室で(32室!)、年間3万件の手術をやっている病院ですが、それでもどんどん手術が増え続けもうこれ以上予約が入らなくなってきました。救急病院でもありますので、手術の2割は緊急手術です。予定がいっぱいのところ緊急手術が入ると、予定手術をずらして間に押し込むしかありません。その結果どうなるか。スタッフは午後2時から手術を始めるために、予定外の残業がしょっちゅう発生しますし、ずらされた手術の担当外科医は2時間の手術をするために日勤帯に数時間の待ち時間が発生することになります。無理に無理を重ねてスタッフにも外科医にも疲労がたまってミスが起こりやすくなります。院内でやはり忙しく働いている管理者は、もっと頑張らないとハッパをかけるということになりがちですが、ここでさすがの米国、外部から招いたアドバイザーはこう言いました。
「手術室を1つ使わずに空けておきましょう。」
いっぱいの予定がこなせないのに、手術室を空けておくなんてできないよ、と外科医は反発しましたが、試用期間を設けてこの病院はこのやり方を採用したのです。
結果はどうなったか。年間の手術件数は10%増加、午後3時以降に行われる手術は45%減少、そして病院の収入は増えました。逆説的な話に思えますが、手術を増やすためには手術室を予定手術で埋めてしまうのではなく、わざと空けておくことが必要なんですね。日常生活、仕事の時間の「すきま」は目の敵にされがちですが、意識的に「すきま」を作っておくことが成長していくコツかも知れません。

このコラムを書いた医師


神戸徳洲会病院院長 冨田 雅史