2023.06.10
昨今、スマホやタブレットなどのデジタルデバイスと触れる機会が急増しており、生活や教育現場でもなくてはならないものとなっています。
教科書がタブレット化することで、子供のランドセルの軽量化にもつながり、非常に便利な世の中になっていますが、ここで問題となってくるのが、どんどん進む子供の近視です。
コロナ禍で、近視の低年齢化、患者数増加が進み、世界的にも問題となっています。
そこで、近年話題になっている近視の進行を抑える低濃度アトロピン点眼についてご説明します。
そもそも近視ってなに?
子供の近視は、主に眼球が前後に楕円形に伸びる(眼軸長が伸びる)ことで、ピントの合う位置がずれることが原因で起こることが多いです。カメラでも焦点が合わないとピンボケしますよね。
近視が進む原因は?
近くを見ることが習慣化してしまうと近視が進みやすくなるといわれていて、一度伸びた眼軸は元に戻りません。ですので、眼軸長の伸びを抑えることが重要です。
低濃度アトロピン点眼にはどんな効果があるの?
元々は、調節(ピント合わせの機能)を麻痺させたり、瞳孔を拡げて検査したりするために使用されていた点眼ですが、適切な濃度まで薄めることで、上記の作用がほとんどなく、2年間で約60%近視進行を抑える効果があると確認されています。
低濃度アトロピン点眼はどうやって使うの?安全なの?
1日1回就寝前に1滴ずつ点眼します。
シンガポールの研究では、点眼終了後、目の調節力(ピント合わせの力)の低下や瞳孔がひらきっぱなしになってまぶしいという報告はありませんでした。アレルギー性結膜炎や皮膚炎、その他の副作用の報告もなく、安全性が確認されています。万一、日中にまぶしさを感じるようであれば、調光レンズなどのご相談にも応じます。
薬以外で良い方法はないの?
前述のように、長時間近くを見続ける習慣が良くないので、生活習慣を見直しましょう。
具体的には、「20ルール」というのがアメリカの学会では推奨されており、「20分近くを見たら、20秒間、20フィート(約6m)先を見よう」という内容です。
集中すると20分なんてすぐに過ぎてしまうので、タブレットなどを見ている時、30分に一度は休憩して窓の外を見る意識をするのが良いと思います。タイマーなどを活用してみましょう。
また、視距離や部屋の明るさも大事で、30cm以上目を離して見る、明るい部屋で見る意識をしましょう。
最近の研究では、1日2時間の外遊びが近視進行抑制に良いというデータもあります。太陽光に含まれる特定の波長が近視進行抑制に効果があり、1日2時間以上外遊びをする子供の方が、しない子供に比べて近視の進行が遅かったという内容です。
最後に
昔から「風邪は万病の元」と言いますが、眼科医の世界では「近視は万病の元」とも言われています。近視が原因で起こる目の病気もたくさんありますので、大事なお子さんの目を守るために、普段から物を見る環境や、目の健康を意識できるといいですね。
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このコラムを書いた医師
神戸徳洲会病院 眼科 石田順子医師