神戸徳洲会病院心臓血管内科(循環器内科)は、2025年3月より心臓・下肢カテーテル術を開始します。
これまでの取り組み
当院におきましては、前体制でのカテーテル診療に端を発した医療安全上の問題により、2024年2月に神戸市より医療法人徳洲会(神戸徳洲会病院)に行政処分(業務改善命令)がなされました。当法人および当院は神戸市に提出した改善計画書に沿って医療安全体制の改善に取り組み、2024年9月13日付で神戸市より改善措置が完了した旨が発表されました。ただし今後1年間は、改善計画の内容が確実に実行されているかについて、引き続き神戸市保健所による定期的な確認を受けることとなっています。当院としては、この「改善措置完了」をあくまでスタートラインと捉え、引き続き患者安全を最優先に、医療安全に関する取り組みを推進してまいります。
こちらでは、これまでの当院心臓血管内科(循環器内科)、とくに心臓・下肢カテーテル術の開始に向けての活動や整備状況について御紹介いたします。
1.カテ室プロジェクトチームの発足
2024年6月より循環器内科の診療体制が刷新され、プロジェクトチーム設置基準(※)に基づき、「循環器内科プロジェクトチーム」を発足しました。さらに、循環器内科によるカテーテル室(以下、カテ室)の運営を安全・円滑に行うため、2024年10月より循環器内科プロジェクトチーム内に「カテ室プロジェクトチーム」を発足しました。(※プロジェクトチーム設置基準:①診療科の責任医師が変更になったとき②休診中の診療科が再開するとき③新しく侵襲の高い治療・処置を始めるとき)
主にカテ室業務に関わるスタッフより、プロジェクトチームメンバー(医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、放射線技師、医事課合計9名)を選出し、教育(勉強会、院外研修、実践的訓練)、環境整備を含むカテ室の運営について、月1回の診療科会議(以下、循環器内科チーム会議)内で報告や検討を行うこととしました。
なお、2024年6月に着任した神戸徳洲会病院心臓血管内科(循環器内科)の科長は、2015年より宇治徳洲会病院循環器部門(心臓センター)の責任者としての診療・運営経験があり、諸学会の専門医や、厚生労働省の臨床研修指導医および医療安全管理者研修を修了済です。
2.前体制によるカテーテル事案の総括
前体制の循環器内科カテーテル事案で医療事故調査制度の対象となった2件中、遺族への説明が完了し報告書開示の同意が得られた事例においては、①治療適用の問題、②治療過程における技術的問題と複数医師連携の問題、③患者さんや家族への説明と同意の問題が指摘されました。
それらの再発防止策を「改善計画」に盛り込んだ上で、上記以外のすべての症例について新体制のスタッフによる検証を加え、総括として「カテーテル検査・治療検証報告」を提出しました。
こうした組織的な内省を通じて、以下に記す体制や仕組みが必要であることが明確に認識され、プロジェクトチームの活動や整備の指針となっています。
- 医師間協議
- カテーテル検査・治療の開始(再開)に際しては、循環器内科専門医2名で治療戦略を協議し、メディカルスタッフとの連携強化の役割を果たす体制
- 多職種協議
- 医の倫理委員会も加え、多職種で治療適応について医師と議論できる体制
- 院内調査
- 職員から疑義がおこれば自動的に院内調査が実施される仕組み
- メディカルスタッフの教育
- 院外研修はもちろん、指導応援を招き最大限の安全策を講じた治療体制
3.スタッフ教育・研修
- 院外研修(宇治徳洲会病院)
- 院内勉強会
- 実践的訓練(シミュレーション)
- 業務手順・内容の見直し:「カテーテルチェックシート」、「緊急カテーテルの流れ」、「急変時フロー」の策定など
徳洲会グループ内の特定の施設(宇治徳洲会病院)と協力関係を構築することで、規範となる診療方針や医療安全に関する指針が定まるばかりでなく、教育・研修を通じて活発に人的交流を行うことで、神戸徳洲会病院心臓血管内科(循環器内科)における持続的な質評価および質改善に繋がるものと考えています。
4.説明と同意(インフォームド・コンセント)
神戸市に提出した改善計画書には、インフォームド・コンセント(以下IC)に関する改善策が盛り込まれました。
患者さんの知る権利と選択の自由を保障するため、院内のIC委員会で承認された説明書と同意書、手順に沿って、説明と同意取得を行います。
5.医の倫理委員会による検査(審議)
神戸市保健所より、カテーテル診療を審議する機能の設置を指導されたため、医の倫理委員会に外部委員(神戸市保健所より推薦)を委嘱しました。
2024年12月24日には、当院内において心臓・下肢カテーテル術のシミュレーションに関する検査(審議)を受け、外部委員より「よく準備されている印象」との評価を頂きました。今後、心臓・下肢カテーテル術の開始に際しましては、引き続き外部委員に症例の適応などについて審議を頂きながら、医の倫理委員会・臨床倫理チームによるモニタリングを行います。
おわりに
以上、これまでの取り組みと現況について御報告いたしました。
神戸徳洲会病院循環器内科は、2025年1月1日をもちまして、診療科名を「心臓血管内科」と改めました。
これは、過去をなかったものにするのではなくて、あくまで「患者安全を第一に、新しい体制を築き上げ、磨き上げていく」という決意です。
「迅速・確実・安全」「自分の肉親を治療する時どうするか」をモットーに、自分自身が受けたい、自分の家族に受けさせたい治療を実践しますので、どうぞよろしくお願いいたします。
2025 年3月
神戸徳洲会病院
院長 尾野 亘
心臓血管内科(循環器内科)科長 松岡 俊三