起立性調節障害とは?
夜遅くまで起きていて、朝は体がつらく起きられない。でも午後になると元気で、夜は携帯を見たりゲームで遊んだり・・。側から見ると怠けているようにしか見えない。これは起立性調節障害によく見られる光景です。
中高生の10人に1人がこの病気を発症し、その内3割は不登校になっています。特に小児科の日常の臨床の場で頻繁に遭遇する病態であり、コロナ流行前と比較して起立性調整障害患者が多くなってきており社会問題化していると言っても過言ではありません。
患者本人は体がつらいのに原因がわからず、不安な思いをしています。またこの病気が厄介なのは、最も発症しやすい時期が思春期で、高校進学という人生の帰路にあたるということです。中学生で不登校になり、「このまま引きこもり、ニートになるのでは・・・・」と悩む保護者も多いです。
POTSの原因は?
神経障害性POTS
自律神経の異常で起立時や起床時に下肢や腸管の血管の収縮不足のために下半身に血液が溜まり、心臓や脳に血液を届けるために心拍数が大きく上昇します。
循環血液量減少性POTS
循環血液量が慢性的に減っており、起立時に心臓や脳に血液を届けるために心拍数が大きく上昇します。
中枢性高アドレナリン作動性POTS
起立時にノルアドレナリンが過剰分泌して心拍数や血圧が上昇します。
自己免疫性POTS
何らかの原因によって自身の自律神経に対する自己抗体が作られ、起立時に循環機能を調節できなくなり心拍数が大きく上昇します。
どのような症状ですか?
睡眠障害/起床困難 頭痛 腹痛 倦怠感 ブレインフォグ
起床困難や倦怠感の他に、起立性調節障害の9割の患者さんが「ブレインフォグ」と呼ばれる症状を訴えると報告されています。「ブレインフォグ」とは脳に霧がかかったような症状を総称し「頭が冴えない」「集中できない」「記憶力の低下」などの症状を呈し、現在ではコロナ後遺症の一つに当てはまると、最近注目されるようになってきています。
治療について
薬物療法
POTSのサブタイプ分類を行い、血液量の低下と交感神経の過剰な活性化を標的とした薬物を選択することが症状の緩和に役立つと考えています。
生理食塩水点滴療法
一般的な治療法については食事療法や運動療法、薬物療法などがガイドラインで推奨されています。しかし実際の臨床の場では、症状増悪時に対する効果的な治療法がなく、患児とその家族に多大な我慢を強いているのが現状です。近年POTSに対する治療法が米国ガイドラインで提示されたことを受け、当院でも倫理委員会の管理の下で難治性POTS患者に対し生理食塩水静注療法を行っております。
栄養指導
起立性調節障害児は消化管の血流不足から食事摂取低下を認めることあり、低栄養状態により様々な症状を呈していることがあります。低栄養状態の改善を必要とする場合は、主治医指示のもと当院栄養士による栄養指導を実施させていただきます。
リハビリテーション
目標と方針
睡眠リズムと身体活動の改善に向けて、規則正しい生活の支援・アドバイスや適度な運動等を取り入れ、ご本人に寄り添いながらサポートいたします。
各療法の内容
- 理学療法(PT)・・・体調に応じた運動や体操の実施・提案
- 作業療法(OT)・・・体操や趣味活動などの提供、生活についてのアドバイス
- 言語聴覚療法(ST)・・机上検査などの評価、口腔機能評価と体操
※介入時は体力測定を実施します。
※プログラムに生かすため得意なこと、苦手なこと、興味があることなどを話しながら進めます。
睡眠障害でお困りの方
起立性調節障害に合併する睡眠障害の診察も行っております。
睡眠日誌を記録の上、受診の際にお持ち下さい。
睡眠日誌のダウンロードはこちら
医療講演情報
垂水区文化センターにて医療講演を開催いたします。
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